「彼らは人間の生き血を吸って生き続ける。生き続けるどころか、われわれの敵なんぞは、若返っているくらいだ。」　　――『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー著／平井呈一訳　創元推理文庫

太古、人類の祖は身の回りの色から多くのものを読み解いた。森の緑に季節を悟り、空の青に天候を読む。そして、中でもある鮮烈なひとつの色を知っていた。

血の赤。

仕留めた獲物から吹き出す祝祭の色であり、深手を負った仲間から溢れ出る死の色であり、生まれくる命の色でもある。生まれ、死に、奪い取る生命とその継承。こうして、血はあらゆる宗教や文化や芸術における最も重要な徴のひとつとなった。

『吸血鬼ドラキュラ』の著者ブラム・ストーカーの没後100年となる2012年に弊廊は開業した。同年には彼を称えたハロウィン企画展も開催。以来、ハロウィンという奇妙な文化を題材に毎年展示を行っている。今年は初心に返り、今ひとたびの血を皆様に捧げたい。

（Gallery 幻・代表 小林義和）